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低栄養(栄養不良)の問題と予防バナー

栄養過多による肥満ばかりが
問題ではありません!

本当は怖い栄養不良(不足)

勝木道夫

勝木道夫(医師)
 ●特定非営利活動(NPO)法人ライフケア協会会長
 ●勝木グループ代表
 ●(財)北陸体力科学研究所理事長


「栄養不良」は栄養素の必要量(年齢や性別、仕事量などにより異なります)と摂取量のアンバランスから生じるもので「栄養不足」「栄養過多」があります。栄養の摂取過多(過食)に伴う肥満などの問題は心臓病や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病(メタボリックシンドロームなど)を引き起こす原因として近年、注目を集めています。一方、栄養不足は、寝たきりの高齢者や疾病時など、特別な状況下における問題と思われがちで、一般的には軽視されていますが、栄養過多同様、体調不良や様々な疾病の原因になるので注意が必要です。栄養不良の中でも栄養過多は、食事の摂取量を制限することで比較的容易に改善できますが、栄養不足は、様々な要因によりおこるため対処の方法も様々です。ここでは、社会の高齢化が進む中、今後、確実に社会問題化するであろう栄養不足(低栄養)について話をすすめてまいります。

栄養摂取バランス

「栄養不足」(低栄養)は誰にでもおこります。

栄養不足(低栄養:以下、混乱を避けるために低栄養といいます)は、年齢や性別、疾病の有無にかかわらず誰にでもおこります。食欲不振や偏食などが続くと、自分でも気づかぬうちに栄養素が不足し、低栄養状態になることもあるのです。


こんな人は低栄養にならないように注意が必要です。

①体調不良(疾病)やストレスによる食欲不振
②口腔や消化器などの治療を受けている(外科的治療)
③加齢に伴い唾液分泌が減少した(口腔乾燥)
④咀嚼力・嚥下機能が低下(口腔機能低下)
⑤味覚が低下した(亜鉛不足・薬品・糖尿病などの疾患)
⑥加齢に伴い嗜好が変化した(あっさりした食事)
⑦加齢に伴う食欲不振(食が細る)
⑧毎日一人で食事をしている
⑨体重が減少してきた
⑩食事の介助が必要

低栄養のタイプ

低栄養にはいくつかのタイプがありますが、多くは食事摂取が不十分なために起こるタンパク質やエネルギー(糖質・脂質)の不足(欠乏)です。もちろんビタミンやミネラルなども不足するわけですが、タンパク質やエネルギーに比べると必要量が少ないことから、サプリメントなどを用いて不足を補うことが比較的に容易です。低栄養において最も深刻な状態は、タンパク質とエネルギーがともに不足したPEM(Protein-Energy Malutrition)という状態です。タンパク質は筋肉や内臓、骨など、身体をつくり、維持するうえで欠かせない栄養素です。また、エネルギー(糖質・脂質)は言葉通り身体を動かすエネルギーになるため、これらがともに不足するということは、命に関わる危険な状態といえます。


低栄養になると…。
  ①筋肉や骨の減少に伴う体重の減少(疲れやすくなる)
②筋肉や骨の減少に伴う運動機能の低下
③タンパク質不足による皮膚の異常(浮腫・褥瘡)
④免疫力の低下による感染症(日和見感染)
⑤体力低下の悪循環による疾病の悪化
⑥生活自立度の低下に伴う要介護の上昇
低栄養の状態とは・・・。
  (栄養状態の指標)

身体の栄養状態の過不足は血液中を流れるタンパク質の一種である「血清アルブミン」の値で評価するのが一般的です。
成人の基準値は4.0~5.1g/dl(血液100ml 中に4.0~5.1g 含まれている)とされています。血清アルブミンは、加齢に伴い減少する傾向があるので老化の指標にもされています。栄養状態が良好な高齢者で4.5 前後が目安ですが基準値を下回り3.5 以下になると余命やADL(日常生活動作)の低下が予測されるので早急な対応が必要です。

低栄養の改善(なってしまったら)
無理は禁物!食事がストレスになることも・・・。

栄養の摂取の基本は、自分で食事を食べること。栄養バランスの良い食事を食べることが大切なのは皆さんご存知の通りです。QOL( 生活の質) の維持にも大いに影響を及ぼします。だからといって食欲のない時や口腔や身体に痛みがあったり、吐き気をもようす時などに無理をする必要はありません。食事が苦痛になりストレスを感じるようでは本末転倒してしまいます。食べられない時には点滴という選択肢もあるのです。まずは、可能な方法で不足した栄養素を補い、低下した体力を回復させ、より多くの栄養を摂取できるようにすることが必要なのです。自宅療養時など点滴による栄養摂取が難しいときには、市販の栄養調整食品を利用する方法もあります。高タンパク、高カロリーでバランスの摂れたタイプの食品は、少量でも多くの栄養が得られ、崩れた栄養バランスを整える効果も期待できます。また、自分で食事を用意しなければならない人や、せっかく用意してもらった食事が食べられなくて心苦しい思いをしているような人にもお勧めします。

食事の重要性

低栄養時の食事のポイント
①バランスの良い食事
②1日3食にこだわらない(回数を増やす)
③水分不足に注意(脱水症状)
④症状にあわせた食べやすい形態
⑤胃腸への負担が少ない(消化が良いもの)

バランスの良い食事とは・・・。

私たちが食べる食事には五つの栄養素が含まれていて、それぞれが重要な役割を担っています。五つの栄養素の中でも、タンパク質、脂質、炭水化物(糖質)は三大栄養素と呼ばれ、PEM を予防する上で重要な栄養素です。三大栄養素以外のビタミンやミネラルは、必要とされる量は、わずかですが三大栄養素の代謝や身体機能の調整に欠かせないものばかりです。これらがバランス良く含まれた食事が低栄養予防にとっても理想的な食事です。

栄養バランス

低栄養の予防

低栄養は、気づかぬうちに進行します。PEM(タンパク質・エネルギー低栄養状態)のような深刻な状態にならないようにするためには、普段からの予防と早期発見が肝心です。予防のポイントはバランスのとれた食事ですが、あわせて適度な運動も重要です。人は誰でも年齢を重ねると筋肉をつくる能力であるタンパク質合成力が低下し、筋肉の量が減少します。筋肉量の減少は、運動能力や基礎代謝を低下させ、食欲不振をまねきます。その結果は十分な栄養素が摂取されなくなり、さらなる筋肉の減量につながるといった悪循環をまねきます。健康維持・増進だけではなく低栄養を防ぐためにも、ダンベル体操のような筋肉に刺激を与える運動を普段から行うことが大切です。
予防とともに重要なのは、早期の発見です。日頃から体重管理を行い、一年で平常時の体重の5%以上の減少があった場合などは、医師に相談して下さい。また、疾病などで、低栄養のリスクが高まっている人は、定期的な血液検査(アルブミン値)をお勧めします。


低栄養の早期発見!

見た目の変化にご注意ください。
痩せた
頬がこけた
むくみがある
顔色がわるい
目の下のくま(窪んだ)

⇒低栄養の疑いがあります。 早期の検査をお勧めします。


 

低栄養予防のワンポイントアドバイス(上手な間食)

食欲の無いときや体調の悪いときに一日3回の食事で必要な栄養を摂るのは困難です。
栄養バランスに優れた市販の栄養調整食品などを上手に利用することで、食事量の減少で不足しがちなビタミンやミネラルを補うことも可能です。

食事バランス


高齢者の低栄養

加齢に伴う様々な身体機能は、食事の摂取量を減少させ、低栄養に起因する疾病のリスクを増大させます。高齢者にとって低栄養を予防するということは、疾病を予防し、QOLや自立度を維持する上で重要なことなのです。

加齢に伴う身体機能の低下

①食欲の低下(筋肉減退による基礎代謝の減少など)
②咀嚼力(噛む力)嚥下力(飲み込む力)の低下
(歯の欠損や口腔筋力の低下)
③唾液分泌の減少
④消化液分泌量の減少
⑤消化器官の機能低下(腸蠕動運動の低下)
⑥味覚の低下(感覚機能の低下)
⑦嗜好の変化(胸やけしやすくあっさりしたものを好む)など

環境や心理的な影響
①一人暮らし(食事をつくるのが面倒/一人で食べても美味しくない)
②老夫婦だけの暮し(刺激不足)
③自立度の低下(介助が必要)
④買い物などが困難(夏期や冬期/遠い)

高齢者にこそ十分な栄養が必要!
高齢者の食事は肉や脂肪を控えた「あっさり」
としたものが良いと思っていませんか?

高齢になると一日に必要とされるエネルギー量は減少しますが、筋肉や骨量を保ち、健康を維持するためには、高齢者でも多くの栄養素を必要としています。

1日の栄養所要量比較

20歳の青年期に比べると70歳の高齢期では、一日に必要とされる総エネルギー量は減少しますが、同程度の体重の場合、筋肉(内臓を含む)や骨量を保ち健康を維持するためには、同量のタンパク質を必要とします。そのため、一日に必要とされる総エネルギー量に占めるタンパク質の割合は増加します。

 

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