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高齢者の口腔(お口の中)の特徴
食べ物の入り口。加齢に伴う口腔の変化

鴨井久一

鴨井 久一(医学博士)
 ●日本歯科大学名誉教授
 ●ウィーン大学医学部客員教授
 ●ライフケア学会名誉会長


高齢者の口腔(お口の中)の特徴

加齢に伴う口腔の変化

加齢は運動能力や免疫力、記憶力の低下など、身体の様々な部分に変化を及ぼします。口腔(口の中)も同様です。歯や歯肉、顎、唾液腺、口腔粘膜などにも加齢に伴う変化が数多くみられます。
中でも口腔の変化として顕著なのは、残存歯の減少です。成人期には親知らずと呼ばれる大臼歯を除くと28本あった歯が70歳代後半には平均で10本以下まで減少してしまいます。一般的に20本以上の残存歯があれば、ほとんどの食べ物を噛みくだくことができ、美味しく食べられると言われていますが、実際は60歳前後から平均で20本の残存歯が保たれていない状況です。このことから、残存歯が20本を下回る60歳前後からは、摂食に何らかの不都合が生じ、摂食量を減少させる可能性があり、知らぬ間に低栄養をまねくことがあるのです。
加齢は、残存歯に対しても変化を及ぼします。高齢者の歯は長年、食べ物を噛んできたため、歯の噛む面(咬合面)がすり減り(咬耗)、長年の誤った歯磨きなどによっても摩耗しています。歯そのもののの形状の変化は、歯並びを変化させ、顎のスムーズな動きや咀嚼にも影響を及ぼしてしまうのです。

高齢者の歯


歯周病による歯の欠損

高齢期に歯を失うの本数が増える最大の理由は歯周病の増加です。歯周病は、P. ジンジバリス(グラム陰性嫌気性菌)をはじめとする歯周病原細菌による感染症です。40歳を過ぎた日本人の80%は、歯周病にかかっていると言われるほど多い疾患です。通常は、生体の免疫作用により活動を抑えこまれていますが、疾病や疲労、ストレスなどにより免疫力が低下し、環境が悪化すると、歯周病も悪化します。いわゆる日和見感染で多因子性の疾患です。歯周病の悪化は歯の周辺組織にダメージを与え、放っておくと歯を失う結果をまねき、正常な食事の妨げにつながります。

失った歯の本数(年齢別)ブラフ


歯の欠損に伴う咀嚼機能の低下

正常な歯を有する人の咀嚼する能率を100とした場合、1本欠損した人の場合、その能率は約半分に低下し、多数欠損(2~7本)した場合には、7割近く低下するという研究データがあります。また、総入れ歯を装着した人の咀嚼能率は35.9%である。8本以上、歯を失うと野菜や肉類などが食べにくくなるため、食物繊維やビタミン、鉄などのミネラルの摂取量も低下することが明らかになっています。

唾液の減少にともなう口腔乾燥

高齢者の約40%は口の渇き(口腔乾燥)を自覚していると言われています。一概に加齢が唾液分泌量の減少につながるとは言えないようですが、高齢者の多くが何らかの疾病を抱え、その治療薬を服用していることから、薬の影響による唾液分泌量の低下を含めると、その数は納得できます。唾液は口腔内を湿らせて口腔粘膜や歯を保護すると同時に、食べ物を噛んだり(咀嚼)、飲み込む(嚥下)、消化吸収を助けています。また、唾液そのもので口腔の汚れを洗い流し、殺菌作用により口腔内を清潔に保ち、適切な環境を維持しています。唾液の減少は、摂食そのものにも支障をきたすとともに、口腔内の粘膜を傷つけ、痛みを伴うことで、食欲を低下させる恐れがあります。

味覚の変化

加齢は味を感じる舌そのものにも変化を及ぼします。
舌は加齢に伴い、厚みが減少し、表面の凹凸も減り平滑化します。味を感じる味蕾の数や感受性そのものにも変化が生じ、味覚が低下すると考えられています。また、味覚は唾液分泌量の減少によっても低下するため口腔乾燥には注意が必要です。
※腸管吸収能が低下し、体内の亜鉛が不足すると味覚障害を起こすことも解っています。
正常な味覚を保つためにも栄養バランスは重要です。

舌(4つの味覚を感じる部位)

 


口腔の健康を保つためには日頃のケアが重要

食べ物を噛み砕き、飲み込み、消化吸収を助け、美味しく味わう、といった口腔の摂食機能を正常に保つためには、日頃の口腔ケアが重要です。加齢に伴う口腔機能の低下は、完全に避けることはできませんが、正しいケアにより、進行を遅らせることは可能です。
特に残存歯の本数は個人差が大きく、80歳になっても20本以上の歯を有している高齢者の数は、全体の15%以上いるのも事実です。生涯にわたり自分の歯で美味しく食事を味わうことは、栄養不良(低栄養)の最良の対抗策です。


口腔ケアの基本は、毎日の歯磨き

日常生活の中で、第一の口腔ケアは、歯磨き(ブラッシング)です。歯を失う恐れのある口腔の二大疾患、むし歯(齲蝕)と歯周病は、食べ物のカスと細菌が結びついたネバネバとした物質、プラーク(バイオフィルム)が原因です。プラークはうがいなどでは取り除けないため、プラッシングによる機械的な除去が必要です。毎日のブラッシングによるセルフケアが口腔疾患の最大の予防です。

 

系統的ブラッシング

1本1本の歯の各面を確実に磨くためには系統的ブラッシングと呼ばれる方法がお勧めです。まずは、上の歯の外側(唇側)から、次に下の歯の外側、そして上の歯の内側(舌側)、下の歯の内側、最後に上下の歯の上面といった順番に、系統的に磨く方法です。

系統的ブラッシング

 

出血しても大丈夫

歯を磨くと歯ぐきから出血することがあります。出血すると不安になり、ブラッシングを中止してしまう人がいますが、これは誤りです。細菌によって炎症を起こした歯ぐきからの出血は、細菌に侵された血液を外に出しているのですから、どんどん出してかまいません。ただし痛みがある場合や、出血の量が多い場合は、他の原因も考えられますので、歯科医師に相談して下さい。

正しいブラッシング


唾液の減少には、口腔のマッサージが有効です
口腔マッサージの方法

口腔周辺には様々な筋肉がありますが、食べ物を食べるときに特に重要な筋肉は、口唇の周りの筋肉(口輪筋)頬の筋肉(頬筋)舌の筋肉(舌筋)です。これらの筋肉が協調して働くことで、口腔の咀嚼・嚥下機能は改善されます。
※これらの運動は、唾液の分泌を促進する効果もあります。唾液が分泌されることで、咀嚼・嚥下の動きもスムーズに行えます。 

口腔マッサージ

自ら行える筋訓練

 

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